持つべきものは妙なこだわり

執着はいずれ愛着に変わるのである

ヨセミテ国立公園 サンフランシスコ

 Spring Break(春休み)は院生にとっては休みではないのだけれど、いい加減ボストンからちょっと抜け出したくなっていたので、思い切って西海岸まで行ってきました。何故かの男二人旅。主目的は世界自然遺産ヨセミテ国立公園(Yosemite National Park)。空港はサンフランシスコ(San Francisco)を使うので、街もちょっと観光。3/25(水)の夕方発、3/29(日)の朝帰り。
 大満足の旅だった。
 写真がうまく回転されてません、修正中です。

3/25(水) 一歩目を踏み外す

 5時頃まで研究をして、オフィス(MITでは自分の机のある部屋をオフィス、実験室をラボと呼ぶ)から空港まで直行。そして早速飛行機が遅れていることを知る。しかもうちらの乗る飛行機のみ。出発前に遅延状況を調べておくのを忘れた。調査を怠らない事をおすすめします。使用したのはAmerican Airline。BOS-SFO往復で$260くらい。当初はイエローストーンに行く事を計画していたけれど、そっちのほうが近いのに2倍の航空運賃を取る事を知ってヨセミテにした。
 マックで腹を満たし、飛行機に乗り、サンフランシスコに着いたときにはすでに日付は変更されていた。時差で3時間得するにも関わらず。当然のことながら公共交通機関は動いておらず。仕方なくタクシーに乗り込み、宿に無事着いたものの眠り始めたときには夜中の1時半を過ぎており、6時起床にプレッシャーを感じながら、おやすみなさい。

3/26(木) ヨセミテ、ヤバイ


 気合いで6時に起床、HertzでGPS付きの車を借りる。MazdaのAtenza、こっちではMazda 6として売られている、東大航空の一部の人たちには思い出深い車だ(笑)。25歳未満なので余計にお金を払わされ(知ってはいたが損した気分になる)、お守りの保険もつけていざ出発。つれのショウは様々な人による再三の説得によって仮免まで到達したもののカリフォルニア州ではマサチューセッツ州の仮免は使えないという法律に阻まれ、予想通りわたくしが全行程運転。と文句を書いたものの、フリーウェイは非常に景色が良く楽しみながらドライブできた。行き先が楽しみなら長時間ドライブなど屁のカッパだ。途中休憩はもちろんマックで。休憩含めてヨセミテまで4時間。
 登山路ではごついトラックに阻まれ、窓を開けてきれいな空気を吸おうとしてもディーゼルの匂いしかせずげんなりだったが、徐々にゴツく荒くなっていく道なりに心は踊る。ヨセミテ全体の1%程度しかないにも関わらずそのメインセクションであるヨセミテバレーYosemite Valleyに入るなり「これすごくね?」「ヤヴァイな」と、語彙の乏しい感想をあげては写真を撮る。アメリカらしい、ゴツい自然だ。
 行動の拠点となるYosemite Villageにはなんとスーパーがある。食べ物は何も持ってこなくていいくらいだ。必要な飲食品を買い、昼ご飯はビーフサンドのようなもの。今のところパン的なものに肉的な何かを挟んだものしか食べていないことにお気づきだろうか。
 計画では初日は車で行けるところで景色を見て、二日目に最もポピュラーなMist Trailというハイキングコースを歩くということだった。どこがいいのかいまいち分からないうえ、まだ雪が残っているので封鎖されているところも多く、アドバイスをもらうためVisitor Centerへ。するとレンジャーは
「そうだな、まだ日没まで6時間くらいあるから、今日はMist Trailに行って、明日Upper Yosemite Fall Trailを行くのはどうだい。Mistのほうは往復4時間くらいで行けるよ。Upperのほうは6時間くらいかな」
ということで急遽着替えてMist Trailへ。

 地面はゴツゴツ。斜面は急。ところどころに雪があってさらにそれが雪解けで沢になってすべりやすい。正直、むっちゃしんどい。さすがstrenuousコース。捻挫の病み上がりの自分がこんなコース歩いていていいのかという疑問をおさえ進んでいくと、後ろに広がる景色はまさに雄大。暑いのに雪があるという矛盾した状況を楽しみつつ、おそらくはここがMist Trailの終わりだろうという場所につく。Verdana Fallが下に、Nevada Fallが先に見える。ああ、我々はなんとストイックなのだろう、Nevada Fallの上まで上ろうとするなんて。途中でおもろい写真を撮りつつ、あまりに無言かつ夢中で登っていたために電話が入ったことにすら気付かず、突き進んだ先にあったNevada Fallの頂上は、「おおおお」の一言だ。写真では到底とらえきれない滝の激しさと、前方に見える谷の姿は、登った人にしか味わえない故に、非常に嬉しい。

 頂上からテレポを使えて戻れたらとぼやきながら戻り、「こんなとこ通ったか?」と途中の分岐で選ぶ道を間違えるというアクシデントもあったが、早く宿に行ってスパに入らねば!という気合いと持ち前の運の良さで無事アテンザのもとに帰り着くことができた。往復4時間ちょい。まじ疲れた。後から地図をみると6時間弱のコースを行ったことになっていた。納得。
 宿はCedar Lodge、Yosemite Valleyから20分くらいのところにあった。部屋は広い、半分で良い。何よりもスパの存在が本当にありがたかった。足の筋肉をもみもみしては「あ〜〜〜〜ぎもぢいいー」と泡ぶくに身を委ね、掃除のおっちゃんが「閉店だよ」と言いにくるまで浸かっていた。部屋に帰り、ビールを一本だけ飲んで、おやすみなさい。

3/27(金) ストイックだからこそ楽しめた


 よし、今日もハイキング、と意気揚々と宿を出たものの、一週間有効な入場券を宿に置き忘れていたため引き返すという事件はあったが、気合いを入れてUpper Yoemite Fall登頂へいざ。Mist Trailは谷を縦に観る景色なのに対してUpper Trailは谷を横から観るコース。感想を書いたところで、「すげえ」しか書けないので省略。滝壺で二重虹が見えたのは感動的だった。カップルはもちろん見かけたけれど、おばちゃん3人組が登っていたり、女友達同士だったり、家族だったり、みんなそれぞれの楽しみ方をしていて、何と言うか、心が洗われる。女の子が彼氏に荷物を全部持たせているのを見ては「あれはどうなのよ」「自分の分は自分でもつ、でも疲れたら手伝ってあげるのが正解じゃね」「ふうん」とか余計なお世話を日本語が通じないことを利用して声高々と発していたけれど、通じていたらどうしよう。日本語なら悪口でも大声でしゃべる癖、治しておかないと日本で大変な目に遭いそうだ。

 車で行けるところでは最も景色がよいTunnel Viewも観てきた。それにしてもみんなごついカメラとごつい三脚もって写真を撮っている。自分もカメラは好きだけれど、写真を撮るための旅行はダメだと思っている。写真を撮る事に集中してると生の景色を眼で見る事を忘れてしまうし、撮ったことで満足して忘れやすくなると思う。とか言いつつ一眼レフが欲しいです。
 この日の締めくくりは満天の星空。「星とか、彼女と見たいわー!」とか言っているつれの人に「なら早く免許とれ」と叱責しつつも、星は飽きなかった。こういうとき星座を知っていると面白いだろうなと感じるけれど、次に星を見るときまで忘れているに違いない。「あれ、蠍座っぽくないか?」と言っているくらいがちょうどいい気もする。昔の人だった適当に名付けた星座だ。
 さて宿に戻ってエンジンを切ったところで
「ああああああああああ!!!」
と叫ぶ自分。バッとトランクに駆け寄り、そこにドコモダケのストラップが着いたカメラが存在していることを確認して
「うわあああよかったあああ」
星を撮ろうとしてちっちゃい三脚を使い、いつものテキトーさでトランクのうえに乗っけたまま、車を運転。しかし我がカメラ君は生還したのだ。トランクにしがみついていてくれた。何と言う感動的再会。こういうこともあるので、急発進急停車で大きな加速度を車にかけることはやめましょう。

3/28(土) サンフランシスコは良い街だ

 朝日とともにTunnel Viewのヨセミテを眺め、名残惜しくもサンフランシスコへ。夏ならば雪が全部とけていて、セコイアの森にも行けたり、ヨセミテのシンボルであるハーフドームHalf Domeを登頂する15時間ハイキングコースにも挑戦できるのだが、それは次回か次の人生にお預け。

 サンフランシスコは、時間もないので有名どころを車で回った。ゴールデンゲートブリッジGolen Gate Bridgeを渡るつもりが道を間違えて下から眺め上げることになったが、結果的にはより良いアングルだった。ものすごい急斜面を上って下りるロンバート・ストリートLombart St.は楽しかった。坂道発信とS字の練習になります。アメリカ人、両方下手すぎる。右折2回で合格する免許試験を行っているくらいだから当たり前か。
 サンフランシスコは、陽気さがただよっていて、坂道も多くて楽しそうな街だった。「今日あの坂チャリでのぼりきろうぜ」とか「ゴールデンをチャリで爆走だ!」とか言える街で、アメリカの街ランキングではいまのところトップ。ボストンは坂がないし、あと、少し暗い。あと寒い。とか言いつつ好きなんですけどね。
 図らずも高い中華を食べてしまった昼ご飯だったが、その日の朝までパン的なものに肉的な何かを挟むか挟まないかの食べ物しか食べていなかったので、すばらしく満足。夕ご飯は、大衆的なイタリアン。安くて美味しかった。腹越しらえも済んだところで空港に向かったが、久々のパン的な(以下略)以外のものを腹に入れたせいか胃腸が喜びすぎて「と、トイレ...」と相成りまして駆け込んだハイアットホテルが、きれいでした。思わぬ収穫。
 帰りの飛行機も再びボストン便だけが遅れていてぐったりしたけれど、ボストンに無事到着。帰りの便はRed Eyeと言われる、車中泊のような便。ボストンに帰ってほっとするかな、と思われたが、雨。そして寒い。ああ、これが現実。

まとめ

 ヨセミテは、5月〜10月が本シーズンですべての場所が開く。しかし混むとのこと。ということで、5月初めに行くのが良いと結論づけられた。そして、2本くらいハイキングするのが良い。僕らはきついコースを言ったけれど、なだらかなコースも何本かあるのでどうぞ。
 サンフランシスコは、住みたい街だ。魔女の宅急便を思い起こさせる。
 ナイスな旅でした。ご飯いれないで、$600くらい。


 それにしてもカメラがよくぞ無事だった。