持つべきものは妙なこだわり

執着はいずれ愛着に変わるのである

登戸での殺傷事件。マクロで社会的・中長期的な活動とともに、ミクロな襲撃対策を忘れない

川崎、登戸で児童らが襲撃を受ける、恐ろしい事件がありました。
www3.nhk.or.jp

これに対し「死にたいなら勝手に死ね」という、ややもするととってしまう姿勢・考え方そのものがこのような犯罪を生んでいるのだという記事を読み、自分は反射的にそう思ったりしていなかったかと問うたとき、正直なところ自信はもてません。追い詰めるのではなく、救いの手を延べる社会を築いていくための努力を、思考停止することなく自分の身近からやっていきます。社会的な地位・権力を持たない一国民としては、小さく局所的に声を上げ続けるのが遠いようで近道なのだと思います。

news.yahoo.co.jp

一方、このような場面に出くわさないとも限りません。そういう場合は現場での瞬時の対応が求められます。この瞬時の対応は、それまでにどれだけリアリティのあるシミュレーションを頭の中及び体の動きとして実施してきたかがものを言うのだと確信しています。

刃物を持った相手には、たとえば公共交通機関内であれば座面が盾として有効であるのだと知ったことが、記憶に新しいです。2018年6月ごろの、新幹線内での襲撃事件です。
www.tokyo-np.co.jp

自分一人のときはどうか。リュックを前に抱えることで致命傷は避けられそうだ。
子供、妻と一緒にいたときはどうか。ベビーカーを押しているときはどうか。どのような隊列を組むことが、全員のけがを最小限に抑えられるか。
常に考えるというのは難しいけれど、(望ましいことではないが)このような事件のたびに再度考える訓練を続けるしか、安全の確率を高めることはできないのだろうと思います。

昨今の自動車による事件報道を受け、すべての自動車は凶器になり得て、予想外の動きをするのだというマインドで歩道・横断歩道を歩く習慣は身につきました。自分と自分の家族の身は、自分で守るしかありません。まずは意識、現実味のあるシミュレーションです。

Kindle Fire 7 読み上げからスマートフォンで本を聴き、重要箇所をEvernoteに読書録するまで

勝間和代さんのこの記事にほぼ沿った形で、Kindleの読み上げ結果を音声で聞いて本を読んでいます。
Kindleの読み上げをICレコーダーを使って1度MP3化すると、劇的に使い勝手が良くなることが分かりました - 勝間和代が徹底的にマニアックな話をアップするブログ

ただ、自分の持っているICレコーダーは音声同時記録機能がなかったので一工夫したことと、スマートフォンの音声再生ソフトウェアにオススメがありますので、ここで紹介します。また、読みっぱなしは良くない。反芻して記録するという作業をとると、得た知識が自分のものになるというのが私の経験です。

  • Kindle Fire 7 が Kindle 本を読み上げさせる
  • その音声を何らかの IC レコーダに低音質録音させる
    • 音声入力と録音を同期させる機能がなくてもOK
  • ICレコーダーのファイルを Mac へ読み込みさせる
    • 大抵のICレコーダーには、USB接続でのファイル転送機能が付いているはず
  • 無料の音声ファイルエディタで読み上げ終了後の空白を削除し、mp3 形式で
    • 音声ファイルエディタは、たとえばAudacy
  • MP3タグエディターでタグを編集
  • スマートフォンWiFiあるいはUSB接続なのでファイルを転送
  • スマートフォン上で、長い音源の再生に適した audipo というソフトで音声を再生
  • 読書録に残すところは Kindle で表示して蛍光ペン
  • 蛍光ペン箇所を読み返し、重要箇所をEvernoteに記録する (読書録完成)
  • Kindle Fire での読み上げ
  • ICレコーダへの低音質録音
  • Mac / PC に移動して無音部分カット、タグ編集
  • MP3タグエディタでタグ編集:タイトル、著者、カテゴリ
  • スマートフォンWiFiあるいはUSB接続なのでファイルを転送
  • スマートフォン上での長い音源の再生には audipo
  • 読書録に残すところは Kindle で表示して蛍光ペン、その中でも重要なのは Evernote

Kindle Fire での読み上げ

f:id:covacova:20190526070638j:plain
Kindle fire 7 - TASCAM DR-05
ここは何も追加することはありません。
下記記事で紹介した通り、電源接続時はスリープ機能をオフにする設定をして、電源に接続しておきましょう。
covacova.hatenablog.com

ICレコーダへの低音質録音

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『本をつくる』鳥海修ほか:書体、フォントづくりの工程にのめり込む

本をつくる: 書体設計、活版印刷、手製本  職人が手でつくる谷川俊太郎詩集

本をつくる: 書体設計、活版印刷、手製本  職人が手でつくる谷川俊太郎詩集

手に取って開くと、フォントづくりの工程の写真や途中の字体が大きく印刷されていて、これは面白そうだと購入しました。そのあと分かったのは、著者(というよりインタビューを受けている人)の一人である鳥海修さんは Mac / iOS 標準フォントであるヒラギノの設計士だということ*1。この本に惹かれたのはそういうところだったのかもしれません。

フォントづくりは筆で書くところから始まり、後半はパソコン上で編集するという工程に、ただただ興味深く読み進めていきました。とても面白かったのは、大きく印刷して修正したものを、「小さく見えるルーペ」を使って確認する場面。通常使う大きさで違和感がないかというのが重要なフォント・書体ならではの確認手順だと妙に感心してしまいました。

後半は活版印刷と本作り。手元に、つくられた本があったのならば、「なるほどこの部分はそういうこだわりがあるのか」と興味深く読めたのかもしれないが、あいにく何もない上に本文中の写真の情報量が少なかったため、前半とはちがって大きく飛ばし読みしました。紙の本は電子書籍よりも好きなのですが、本は物体として大切にするよりもその中身をいかにしゃぶり尽くすかを大事にしていて、蛍光ペンを大雑把に引いたり書き込んだりする自分とは少し趣向が違ったのだろうと思います。

ただ、製本は興味があります。お金と気持ちの余裕が出来たときに、『私たちの文字』買うかもしれません。
misuzudo.shop13.makeshop.jp

前半だけでも買ってよかったと思える本でした。なお、これは電子書籍ではうまく読めないと思います(この記事作成時点 2019/5/26 では Kindle 版は出ていない)。作られた書体「朝霞」の初期と最終版を見比べるためにページを何度もめくり直しますし、見開きのページもあります。

*1:経営する字游工房Windows 10 標準の游ゴシックも手がけている。あのフォントは私は好きではないので、もしかしたら Windows 10 の使い方・組み込み方が下手なだけなのかもしれない。

読み上げ専用端末としての Kindle Fire 7 (HDシリーズもおそらく同じ) を買ったらやる初期設定

【この記事は、Kindle Fire 端末の初期設定に範囲を絞っています。読み上げ読書のフローは別記事で】

Kindle本を読み上げるため「だけ」に、Kindle Fire 7 を購入しました。2019/05/17時点でKindle本を直接読み上げる機能は Kindle Fire 端末にしかありません。KindleiPad のような汎用タブレットの用途で購入すると、動きが遅すぎて使い物にならないことは分かっていたので、ほんとうにKindle本を読み上げるためだけと割り切って購入しました。実際、動きがモッサリしすぎていて汎用タブレットにはなり得ません、断言できます。
結果として6000円の価値はあったと思います。

さて、安いためあってか初期設定が非常に「わずらわしい」ものになっています。徹底的にシンプルにします。

  • ストレージ容量確保
    • 16GB, 32GB 程度のSDカードを本体起動前に挿入しておく
  • 広告を表示させない、無駄なダウンロードを防ぐ
    • 「設定>アプリとゲーム>Amazonアプリケーションの設定>キャンペーン情報」を開き「ロック画面のキャンペーン情報」をオフにする。
    • 「設定>アプリとゲーム>Amazonアプリケーションの設定>ビデオ>ストリーミングおよびダウンロード」を開き「OnDeck」をオフにしましょう(勝手におすすめ動画をダウンロードされるのを阻止)。
    • 「設定>アプリとゲーム>Amazonアプリケーションの設定>ホーム画面」を開き「おすすめ」をオフにする(ホーム画面におすすめが表示されるのを阻止)。
  • 画面をすっきりさせる
    • 「設定>機能制限」から使用しないプリインストールアプリの機能制限(非表示)設定する。Kindleしか使用しないので「本」「アプリとゲーム」以外はすべて制限中にする。
  • 開発者モードで、読み上げ時にスリープしない設定に
    • 「端末オプション」の下のほうにある、シリアル番号7回タップ。これで開発者モードが有効に
    • 以下のオプションを設定
      • 充電中はスリープモードにしない
      • GPUレンダリングを使用 (多少なりとも高速に)
      • アニメーションのスケール、持続時間のスケールを 0.5x に (見た目だけでも、わずかであっても高速に)

Google Play をインストールしてAndroid化もしましたが、それ以来使ったことがないので、Kindle 読み上げ専用端末としては不要と思います。

『驚きの皮膚』傳田光洋(2015) - 分野を越えた科学的アプローチ、筆者の飽くなき人間への興味

驚きの皮膚

驚きの皮膚

物の手触りに必要以上にこだわってしまう自分の性質から、以前から皮膚に対する興味がありました。
またひとつ、自分が知らなかった世界を教えてくれる本に出会うことができました。

この本は大きく3部構成に分かれています。

  1. 皮膚の基礎研究に対して筆者が行ってきたアプローチと成果
  2. 人間というシステムの最先端である皮膚がもっている驚きの能力の研究
  3. 社会構造というシステムと人間の可能性に対する筆者が飽くなき興味

以下で示す「部」の番号は、本書内での番号とは異なり、上記3つを指します。

1部で私が感銘を受けたのは筆者の皮膚の本質を知ろうと言う意気込みと、それに対する物理と化学の知識背景をふんだんに使った研究手法です。皮膚の角層の保湿の主役はなんだ、という皮膚学会の論争に対する筆者の問いかけがその姿勢を表しています。

そんなことより重要なのは、自動車のたとえに戻ると、「自動車のガソリンを燃焼させ、そのエネルギーを回転運動に変えて走る」というのが本質だということです。私は、角層機能についても、そんな本質的な議論、研究が必要だ、と思い始めました。

筆者の研究の軌跡が物語のように読みやすく楽しく書かれています。

2部では皮膚の知られざる機能と性能について様々な研究成果を示しています。どのような内容かは本を読んで楽しんでいただきたいですが、私がこの本の中で「なるほど」と納得したたとえを紹介します。

「企業の皮膚」で働く人たちわ、取引先や店頭で、お客さん一人ひとりへの対応について、いちいち「脳=取締役会」の判断を仰いでいては仕事にならない。最前線に立つ人が、かなりの判断を瞬時に下さなければなりません。

3部目は皮膚との関係性がやや弱いですが、それを差し置いて筆者の余りある人間と社会科学と文明に対する興味と知見に触れることができます。

筆者は、「社会構造」という意味合いで用いている「システム」にがんじがらめになってしまった人間の今を憂いながら、人間の可能性や素晴らしさを信じています。本来の人間への回帰あるいはさらなる前進に、人間の物理的最先端である皮膚が一役買ってほしいと強く願っているように受け取れました。興味が広すぎる筆者にとって、皮膚というのはたまたま仕事上専門分野になったものである一方で、それを通して人間の本質を捉えようとするエネルギーには感服します。

とても良い本に出会いました。