持つべきものは妙なこだわり

執着はいずれ愛着に変わるのである

ナポリ、カプリ島(2) Napoli, Capri 2009.7.25-7.26

 涼しい部屋で寝たあと、早朝起床。カプリ島Capriまでの格安フェリー会社の便は7時半にしかないということで、6時半頃に起床して前日に購入していたパンを食らう。そのホステルは朝ご飯付きだったが、さすがに6時半は早すぎるので出してもらえなかったのだ。結局朝飯代の分を考えれば、格安フェリーに乗った意味がなかったような気もするが、時間が稼げたので良しとする。1時間15分ほど船に揺られ、近づいてくる島はなかなかに美しい。
 青の洞窟Grotta Azzurraがもちろん目当てだったが、着くや否や、チケット売り場に「波が高いため中止です」と子供が書いたような手書きで日本語が書いてあるのを目にして意気消沈である。後から来た日本人ツアーグループもみんな肩を落としていた。しょうがないので、洞窟には入らないが島を一周するボートに乗ることにした。するとどうだろう、ものすごいいい景色じゃないか。いろんなところで止まって、この景色はここが見所だ、と説明してくれるのだが、英語がなまりすぎていて全くききとれん。それでも、「偽」青の洞窟にも入ってくれて、なんとなくイメージはできた。ちなみに、弟はボストン土産のレッドソックスのキャップをかぶっていたのだが、ほかのボートにものすごい典型的なアメリカ人のおっさんのソックスファンを発見し、ティレニア海上でファン交流が生まれたのであった。
 と、ここまでは意気揚々であったが、だんだんと波が高くなってくるので酔ってくるし、船は進まないのでさらに酔うという悪循環に巻き込まれ、テンション高かったヨーロッパ人もみんな途中からだんまり(笑)。そのときは自分も(笑)などという状況ではなかったが、いまとなれば笑い話だ。結局旅なんて、楽しい経験よりも失敗や苦労の方があとあと面白い話になる。それにしてもあのときの船酔いはひどかった。
 結局島一周は2時間以上もかかり、ぎりぎり帰りのフェリーに乗って、ナポリに帰着。ホステルに置いてあった荷物を拾って駅に向かい、一挙にフィレンツェへ。EuRail Passはいわば乗車券の部分しか含まれていなくて、特急券を払わなければならない国が多く、イタリアはかなりぼったくる。鈍行に乗れればいいのだが、ナポリフィレンツェ高速鉄道Alta Velocitàしか選択肢がないので10ユーロ払うはめに。1400円で新幹線に乗れれば安い、と思うかもしれないが、50日間ずっと列車の旅なので、まったく馬鹿にならない。しかし文句も言ってられないので、EuroStar Italiaに乗り込む。しかしさすがイタリアンクオリティと言ったところか、冷房が壊れていて死ぬほど暑い。イタリア人乗客と車掌の間で、「めちゃ暑いんやけど冷房つけられへんの!?」「いまこわれてますねん」「高い金払って乗ってこのサービスかい!」「そんなこと言われてもどないしようもありません、がまんしてください」と言った会話がされていた、と思う。
 ローマを経由してフィレンツェに向かうのだが、そのローマで自分の前に学生っぽい、イタリア人ではない人が座った。ニコンの一眼を持っていて、トイレに行く際に「これ見といてくれないか?」と頼まれたことから始まって、話をした。ノルウェー出身で、ミラノ大に経済の勉強にきているのだと言う。ヨーロッパ・アメリカ・日本の大学教育について話しあったあと、ミラノの見所を教えてくれた。旅で、最初の友人となった。話していると電車の2時間くらいはあっという間で、いつの間にかFirenze - Santa Maria Novella駅に到着していたのだった。