持つべきものは妙なこだわり

執着はいずれ愛着に変わるのである

『本をつくる』鳥海修ほか:書体、フォントづくりの工程にのめり込む

本をつくる: 書体設計、活版印刷、手製本  職人が手でつくる谷川俊太郎詩集

本をつくる: 書体設計、活版印刷、手製本  職人が手でつくる谷川俊太郎詩集

手に取って開くと、フォントづくりの工程の写真や途中の字体が大きく印刷されていて、これは面白そうだと購入しました。そのあと分かったのは、著者(というよりインタビューを受けている人)の一人である鳥海修さんは Mac / iOS 標準フォントであるヒラギノの設計士だということ*1。この本に惹かれたのはそういうところだったのかもしれません。

フォントづくりは筆で書くところから始まり、後半はパソコン上で編集するという工程に、ただただ興味深く読み進めていきました。とても面白かったのは、大きく印刷して修正したものを、「小さく見えるルーペ」を使って確認する場面。通常使う大きさで違和感がないかというのが重要なフォント・書体ならではの確認手順だと妙に感心してしまいました。

後半は活版印刷と本作り。手元に、つくられた本があったのならば、「なるほどこの部分はそういうこだわりがあるのか」と興味深く読めたのかもしれないが、あいにく何もない上に本文中の写真の情報量が少なかったため、前半とはちがって大きく飛ばし読みしました。紙の本は電子書籍よりも好きなのですが、本は物体として大切にするよりもその中身をいかにしゃぶり尽くすかを大事にしていて、蛍光ペンを大雑把に引いたり書き込んだりする自分とは少し趣向が違ったのだろうと思います。

ただ、製本は興味があります。お金と気持ちの余裕が出来たときに、『私たちの文字』買うかもしれません。
misuzudo.shop13.makeshop.jp

前半だけでも買ってよかったと思える本でした。なお、これは電子書籍ではうまく読めないと思います(この記事作成時点 2019/5/26 では Kindle 版は出ていない)。作られた書体「朝霞」の初期と最終版を見比べるためにページを何度もめくり直しますし、見開きのページもあります。

*1:経営する字游工房Windows 10 標準の游ゴシックも手がけている。あのフォントは私は好きではないので、もしかしたら Windows 10 の使い方・組み込み方が下手なだけなのかもしれない。