持つべきものは妙なこだわり

執着はいずれ愛着に変わるのである

ミラノ Milano 2009.7.28-29

 ミラノ駅はさすがにでかかった。首都はローマだが、経済の中心はミラノ。都市機能は駅の一方に広がっていて、観光地はその反対側。しかし都会は東京で十分なので、目もくれずドゥオーモに向かった。

 地下鉄にDuomoという駅があり、本当にそこを出ると、目の前にすごいものが立っているのだ。ヨーロッパのいろんな教会をまわったけれど、結局この教会が一番好きかもしれない。外見だけでなく、内側も迫力がある。ステンドグラスは渦巻いているような模様で、美しいというより教会全体がかっこいいのだ。電車で会ったノルウェー人に教えてもらった通り、しっかりと屋上にも上った。装飾の細かさに感心しっぱなしだ。屋上からの景色はフィレンツェのようには行かないが、尖塔がこれまたかっこいい。
 教会の前では黒人のにいちゃんたちがミサンガを売りつけてくるが、それは「いや、おれには似合わないから」とか言って回避して、広場から続く、ギャラリアへと足を運ぶ。いかにも高そうな店ばかり並んでるが、そんなところにこんな身なりで入ってもどうしようもない。進んでいくと、何ともうまそうなジェラート屋さん(ちょっと高そう)が。ジェラートと言えばミラノだろう、と今までずっと我慢していたので、少々の高さは我慢だ。超うまい。ミラノだからなのか、高いからなのか。灼熱のなか、ひとときの幸せを噛み締めた。
 ドゥオーモで感動したのはいいのだが、はっきり言ってミラノでは見るものがない。AC Milanの観戦チケットを持っている訳でもないし相変わらずの疲れも手伝って、軽食をとって早めに宿に行くことにした。今回の宿はHostelling International (HI)に加盟しているところで、そういうところは大概観光中心からは遠いのだがミラノも例外ではなかった。そして過去二つの冷房付きの宿の快適さに慣れてしまった体は、どんよりとした暑さの部屋に疲れが増してしまった。HIの宿はベッド数が多く安いが、キッチンや冷蔵庫がない場合が多い。シャワーを浴びて、近くのスーパーでコーラを買って飲んだあと、さあ寝るか、と言ったところで暑さに加えもう一つの敵が現れた。蚊だ。半端ない多さが窓から入って攻めてくる。しかし窓を閉めると本当に暑い。かゆさに耐えるのか、暑さに耐えるのか。結局窓をほんの少しだけ開けるという、どっち付かずの策で長い夜を過ごすことにした。人間の適応力はすごいもので、どうやらベッドさえあれば過酷な状況でも眠れるらしい。自分はどちらかといえば同じ布団、同じ枕でないと深い眠りに落ちないタイプだけれど、背に腹は代えられないとなるとわがままさは引っ込んでしまった。
 朝になると忌々しい蚊はどこかへいなくなってしまい、清々しい太陽の光。HIの強みである、無料の朝食(というよりは料金に含まれているのだが)をいただきに行く。久しぶりにちゃんとした朝飯だ、とわくわくしながら行くのだが、そこで待っているのはパン、シリアル、ジャム、薄っぺらいチーズ。暖かいものは何もない。冷たいものだけ、量は少なめ、というのがどうやらヨーロッパ流の朝食らしい。それにしても、パンが堅くて乾いていて、美味くないんだよな。食べ放題と言われても、大して食べられない。
 腹が不満足のまま地下鉄に乗って中央駅に向かうのだが、もう一度ドゥオーモの勇姿とジェラートの味だけは楽しみたくて、まったく同じ場所で時間を使うことにした。それでも、白い塔たちはきれいで迫力があり、ジェラートは本当においしかったのだ。ミラノはこの二つを楽しむだけでいいので3時間くらい途中下車すれば十分。蚊にかまれた跡を大量に携えて、電車でベネチアへと向かった。