持つべきものは妙なこだわり

執着はいずれ愛着に変わるのである

信頼できる情報をたぐる技術を鍛える -- 『プロ司書の検索術』

【2021/10/01(金) 追記】関連する本ブログの記事を、最後に引用した。



『プロ司書の検索術 -- 「本当に欲しかった情報」の見つけ方』入矢玲子・著 (日外アソシエーツ)

司書のプロであり、情報リテラシーの啓蒙に現在努めている著者が、本当に欲しかった、かつ、信頼できる情報にたどり着くための技術や考え方に凝縮した本である。

読みたい本リストにあったのだが、はてなブックマークの人気エントリに以下の記事が上がってきたのがきっかけで、図書館で借りて読んだ。2019年9月15日の記事だが、選挙前だからなのか、ちょうど2年後の2021年9月15日に話題となっていた。
www.nishinippon.co.jp

司書のAI化については、奇しくも著者が本書「あとがき」にて言及している。

たとえば私専門のレファレンスサービスについて言えば、いずれはAI司書がすべてを取り仕切るようになると想像しています。しかし、どのようなAI司書がふさわしいかを考え、企画して実現させるのは人間です。

司書がどういう風に検索にあたっているかや、司書を活用しよう、という内容は勿論、Google 検索 (私は最近 DuckDuckGo を使っているが) のみではたどり着きにくい情報への入り口を具体的なサービス名・サイト名で紹介しているところがとても有用であった。

思い込みを外していく、連想していく

前者に関して、探している本人の思い込みを疑い、それを外していく視点は面白い。はてな界隈では人気が高い福井県立図書館の覚え違い特集が本書でも紹介されているのだが、笑えるが (自分もやっているなと思い出すと) 笑えない、分かり易い例だと思う。
福井県立図書館 | 覚え違いタイトル集

検索時に「連想する」という姿勢は、考えたこともなかった。それはやはり自分が検索しようとしている情報 (その元となるキーワード) が正しい、最も近道だという思い込みがあるからなのだと思う。連想という文脈で紹介されているわけではなかったが、国会図書館のリサーチ・ナビが学術分野の連想図 (樹形図) を出してくれるのがとてもワクワクした。検索窓に何でも良いのでキーワードを入れてみよう、お試しあれ。このリサーチ・ナビは探検のしがいがある場所だと思った。
rnavi.ndl.go.jp

信頼できる情報元

自分の場合、情報の信頼度に特に気を付けるのは医療情報である。Google (日本語版) で医療関係の検索をすると数々のアフィリエイト記事・デマ記事が上位に表示されて問題となり、改善されたことになってから久しいが、査読された論文でもないので結局素人は判断ができない。先日、腰椎の椎間板ヘルニアに一時的になった (という表現が正しいか不明) 際も、経過観察が一般的だという内容を受け入れきれずにいたが、以下の「Mindsガイドラインライブラリ」ような診療ガイドラインデータベースを知っていれば気の持ちようも変わっただろうと思う。
minds.jcqhc.or.jp

すべて紹介しないが、本書ではこのようなデータベースを複数件、分野別に紹介している。

私は司書レファレンスサービスを使うだろうか

体系的知識を獲得するならば書籍、しかも学術書・専門書。これは疑う余地がほとんどないが、その書籍にたどり着くまでに司書レファレンスサービスを使う日が来るだろうか。この本のおかげで、10件以上有用な「お気に入り」サイトが増えて活用するつもりだが、司書さんにお世話になる日は少し遠い気がしている。

余談:私の今の図書館の使い方

  • 気になった本を図書館で借りる
  • 目次、本の雰囲気を掴む。気になったところを読む。全部読まなくても良い。
  • 読破しなかった場合「もう読まなくてよい」「もう一度借りる」「買ってゆっくり読む」のどれかを選ぶ

図書館から借りている2週間で読破する必要は無い、と割り切ってからは図書館の活用がぐっと広がった気がしている。ご参考になれば幸い。

関連書籍・記事

『図書館のプロが教える "調べるコツ" 』浅野高史・著
数年前に読んだが、この記事で紹介している『プロ司書の検索術』ほどの「読んでよかったー!」感は得られなかった。

2018年にこのブログで記事も書いていた。
covacova.hatenablog.com


図書館から借りた本は読み切らなくて良い、というスタンスについてはこちらにも言及した。
covacova.hatenablog.com