持つべきものは妙なこだわり

執着はいずれ愛着に変わるのである

人と人との関係性を社会科学と哲学の枠組みで冷静に捉える:『友だち幻想』菅野仁

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

題名の「友だち」だけでなく、親子関係や先生・生徒の関係といったあらゆる人間関係を社会科学や哲学の枠組みでとらえ、若い世代とその親世代への悩み解決の助けとなることを目的とした本です。通勤1時間の私は1往復半程度で読み切ってしまうほどすらすらと読めますが、読み流すにはもったいない知恵が詰まっています。いつもながら、蛍光ペンでマーキングしながら読むことをおすすめします。

新しい考え方 ★★★★☆4
新しい知識体系 ★★★★☆4
新しい文章技術 ☆☆☆☆☆0
新しいドキドキ ☆☆☆☆☆0

冗長な構成がなく非常にコンパクトに凝縮されていることが、この本の最大の特長と思います。レビューとして抜き出そうとすると全てを紹介しなくてはなりません。したがって、ここでは私の記憶に最も強く残った二点を紹介するにとどめます。

学校での人間関係といじめ

いじめの問題があるとき、「みんなで仲良くしよう」という方向性の解決策が取られることに警鐘を鳴らします。人間なのだから、仲良くなれない人は必ずいる。仲良くならなくて良いから、最低限のルールを守って距離を置けば良い。「仲良し」「敵対」のほかにも「保留」「距離を置く」という人間関係を取り得ることを子どもたちは知り、大人も全員仲良しの幻想を抱かないことを説いています。

親子関係

つまり親子は、他者性ゼロからスタートして、やがて少しずつ他者性をお互いに認めるような方向に行かざるを得ません。
(中略)
喩えて言うなら、子供にとって、親というのは”多段型ロケット”のようなものなのです。

それぞれの段に応じた特徴がある。ある段階に来ると、子供は前の段の関係性を切り離して行かなければならない、親もそれに応じなければならない。実に良い喩えだと感じました。